個人破産手続の概要
(免責不許可事由)
破産は,借金の免除(免責)をしてもらうための手続ですが,一定の事情(免責不許可事由)があり,その程度がひどい場合等は,裁判所から免責を許可してもらえないことがあります。
免責不許可事由の具体例は次の通りです。
収入に見合わない過度の浪費
ギャンブルのために借金をした
財産を隠して裁判所に破産申立をした
裁判所へ嘘の申述をした
支払いが出来そうにないのに,返済ができるかのように装って借り入れをした
カードで商品を買って換金行為をした
その他
この免責不許可事由は,その内容や程度によって裁判所の判断が変わってきますのでご不安な方は,村上・久保法律事務所にご相談ください。
(申立準備に必要な期間)
弁護士に依頼をした後,個人の自己破産(個人破産,自己破産)の申立準備を開始します。
準備に必要な期間は様々ですが,おおむね1ヶ月から2ヶ月以上かかる場合が多くなっています。個人の自己破産(個人破産)の場合は,消費者金融などから借り入れをしていることが多いのですが,消費者金融などに対する払いすぎ利息(過払い金)の調査に1ヶ月以上かかることが多いためです。
(破産手続に必要な期間・・・破産管財人が選任されない場合)
申し立て内容に特に問題がなく,免責を不許可とする程度の免責不許可事由がない場合は,破産申立をしてからおおむね3週間前後で破産手続開始決定(破産宣告)がでます。そして,破産管財人は選任されずに,破産手続開始決定と同時に免責決定も出され,債務の支払いが免除されます。免責決定が確定するまで約1ヶ月かかります。
破産申立から免責許可決定の確定までおおむね3ヶ月程度かかります。
(破産手続に必要な期間・・・破産管財人が選任される場合)
個人の自己破産(個人破産)の多くの場合,破産管財人は選任されません。
しかし,個人事業主の方の自己破産(個人破産),会社代表者様の自己破産(個人破産),免責不許可理由がありそうな個人の方の破産の場合は,破産管財人が選任されます。破産管財人に就任するのは,破産申立をした会社やその取引先の会社と全く関係のない弁護士です。申立手続を依頼された弁護士が申立人の破産管財人に就任することはありません。
破産管財人が選任さた場合は,破産管財人が財産の調査・換価・免責の調査等をおこないます。そして,免責調査の結果,免責不許可事由がないか,免責不許可事由があっったとしてもその内容が軽微であるなど,免責が可能な場合は,裁判所から免責許可決定が出されて,債務の支払いが免除されます。破産申立から免責許可決定の確定までおおむね最低でも4ヶ月程度以上はかかります。
(破産手続き中に働けない職業・・・資格制限)
各種法令上,破産手続中は就くことのできない職業があります。主なものは次のような職業です。
警備員
生命保険募集人および損害保険代理店とその役員
宅地建物取引主任者
旅行業務取り扱い管理者
*会社の取締役は,自己破産によって一度取締役でなくなりますが,破産
手続中でも再度会社から取締役に選任してもらえば,取締役になることがで きます。
*公務員や学校の先生は破産によってつけない職業には含まれていません。
*選挙権は,破産をしても無くなりません。
(協力義務など)
破産者は,当然,破産管財人の調査やその他の破産手続に協力する義務があります。
個人破産に必要な費用
(弁護士費用)
個人の方(サラリーマンや年金生活者など)の場合は,資産,収入が一定基準以下であれば,法テラス(日本司法支援センター)の弁護士費用立替制度が使用できる場合がほとんどです。
立て替え制度を利用した場合の弁護士費用等は債権者数によって変動しますが,おおむね実費込みで152,600円から206,600円程度です(但し,後述の予納金は含みません。事件の難易度が高いような場合は、法テラスの判断で増額される場合があります。)。返済は原則として毎月5,000円、7000円、10,000円のいずれかであり,保証人は必要ありません。
法テラスの弁護士代金立替制度をご利用いただけない方は,別途ご相談させていただきます。
(予納金)
弁護士費用とは別に,「予納金」とよばれるお金を裁判所に現金で納めなければなりません。個人の破産の場合,裁判所が破産手続を進めるために破産管財人を選任する場合と,選任しない場合があり,それぞれで必要な予納金の額が異なります。それぞれの場合の予納金は,おおむね次の通りです。なお,予納金は原則として法テラスの立て替えの対象とはなりませんので,お客様ご自身でご用意いただく必要があります。
破産管財人が選任されない場合
個人破産では,多くの場合破産管財人がつきません。この場合,裁判所に
納める予納金は10,584円です。
破産管財人が選任される場合
個人事業主様,会社代表者様や,後述の免責不許可事由の存在が疑われる
個人様の場合,多くの場合,裁判所の決定で破産管財人が選任されます。
この場合の,予納金の目安は次の通りです。この金額に,産業廃棄物処理
費用や建物の明け渡し・原状回復費用が加算されて, さらに多くの予納金
が必要になる場合もあります。
負債総額 予納金
5,000未満 20万〜50万
〜1億未満 80万
〜5億未満 150万
〜 10億未満 250万
〜 50億未満 400万
〜100億未満 500万
〜250億未満 700万
〜500億未満 800万
〜1,000億未満 1,000万
〜1,000億以上 1,000万以上
借金の取り立てが通常は止まります
個人破産の直接的効果ではありませんが,個人破産,自己破産を含む「債務整理」を弁護士に依頼すると,一部のヤミ金等を除いてほとんどの場合債権者からお客様への直接取立てが止まります。
また,ご依頼いただいた後は,借金の返済を停止していただきます。破産の場合,住宅ローンの支払いも停止していただきます。
そのため,多くの場合,ご依頼いただいた後は,借金の取立てと返済におわれていた生活から一旦離れて,一息つくことができます。
なお,ご依頼をいただく際に,個人破産,自己破産,個人再生などの方針が決定している必要はありません。まずはご依頼をいただき,その後,借金内容や家計内容を精査して,方針を決定していただいても結構です。もちろん,ご依頼をいただく際に明確な方針が定まれば,方針決定の上でご依頼いただくこともできます。