法人の自己破産(会社の自己破産)の手続の概要
(申立準備)
弁護士に依頼をした後,会社の自己破産の申立準備を開始します。
準備に必要な期間は様々ですが,急いで準備をする場合は2日~3日で準備をして裁判所に申立をおこない,申立をしたその日のうちに裁判所から破産手続開始決定(破産宣告)をいただきます。
(破産管財人)
破産手続開始決定(破産宣告)と同時に,破産管財人弁護士が選任されます。破産管財人弁護士に就任するのは,破産申立をした会社やその取引先の会社と全く関係のない弁護士です。申立手続を依頼された弁護士が破産管財人に就任することはありません。
(破産手続)
破産管財人が就任すると,会社のすべての権限が破産管財人に移ります。
そして,破産管財人は,売掛金の回収,会社資産の売却,預貯金の回収などをおこなっていきます。
破産管財人が回収すべきものが無くなったら,税金や労働者の未払い賃金など,法律上優先して支払うべきとされている支払いをおこないます。これらの優先的な支払いをしても,なお,お金が残っている場合は一般の債権者に配当をおこなって,破産手続を終了します。
破産手続は,短い場合で3ヶ月程度,長い場合は数年かかる場合もあります。
(協力義務など)
会社の代表者や会社の役員の皆さんは,当然,破産管財人の調査やその他の破産手続に協力する義務があります。
法人の自己破産(会社の自己破産)に必要な費用
(弁護士費用)
会社の規模,会社の負債総額などによって弁護士費用は変わります。
村上・久保法律事務所では,法人の破産についての弁護士費用は,おおむね50万円からとさせていただいておりますが,会社資産の状況に応じて相談をさせていただくなど,柔軟な対応を心がけております。
(裁判所への予納金)
弁護士費用とは別に,「予納金」とよばれるお金を裁判所に現金で納めなければなりません。予納金の金額も,会社の負債総額等によって変わります。但し,会社に産業廃棄物があったり,オフィスを借りていて明け渡しが必要な場合などは,さらに産業廃棄物処理費用や建物の明け渡し・原状回復費用を加算して納める必要がでてきますので,さらに多くの予納金が必要になる場合もあります。
予納金は破産手続き終了後に戻ってくるものではありません。また,会社に予納金以上の現金や預貯金・資産があったとしても,債権者への配当のための資産としてすべて差し出す必要があります。
会社の経営者の皆様は,最後の最後まで支払いをおこなって,資金繰りに走り回るお気持ちはよくわかります。しかし,現金が無くなってしまってからでは会社の破産すら行えなくなります。できることなら,資金が底をつく前に,少し余裕を持って札幌の村上・久保法律事務所にご相談だけでもしていただきたいと思います。
予納金の目安は次の通りです。この金額に,産業廃棄物処理費用や建物の明け渡し・原状回復費用が加算されます。
負債総額 予納金
5,000未満 50万〜70万
〜1億未満 100万
〜5億未満 200万
〜 10億未満 300万
〜 50億未満 400万
〜100億未満 500万
〜250億未満 700万
〜500億未満 800万
〜1,000億未満 1,000万
〜1,000億以上 1,000万以上
会社の資産の扱い,注意点など
自己破産に必要な費用を超える現金・預金・その他の会社資産があったとしても,それらを破産宣告前に自由に処分することは許されません。会社の資産はすべて,破産管財人が現金化し,法律の定める順番にしたがって,破産手続費用や会社の債務の支払いにあてられなければなりませんので,破産申立に際しては,会社の資産をきちんと管理して,必要な費用を超える部分もすべて破産管財人に引き渡さなければなりません。
また,自己破産の前に,特にお世話になったところにだけは支払いをしておきたいと考える方もいらっしゃると思います。しかしながら,破産法は,すべての債権者を平等に扱うことととしています。したがって,お気持ちはわからないわけではありませんが,特定の債権者だけに支払いをするような不平等扱いはしてはいけません。